水嶋かずあきの甘辛問答

神奈川県平塚から、水嶋かずあきが語ります。
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また今日もやってる

物事には純粋無垢な事実があります。
正に、ビデオかなんかで再現できる現場の出来事。
しかし、人はそれぞれ個性と言うフィルターを持っているので、
要は、見方が異なるのです。
フィルターと言うのは、その人の価値観でもあるのですが、

こう言う場合は、時に利害関係や興味の視点が異なるなどのために、

置かれたアクセントが異なるわけです。
異口同音、という言葉がありますが、本来は、異口異音と言うのが正解でしょうね。


じつは、よくよく聞きとれば微妙に違いがある、という事です。
ある事実を語るのに、このフィルターにかけてものを言うのだから、
話が重なれば重なるほど、事実が見えずらくなる。

芥川龍之介の短編小説、藪の中は、これを如実に表したものです。

これは、殺人と強姦という事件をめぐって4人の目撃者と3人の当事者が告白する証言で成り立っています。
男の名は若狭国国府の侍、金沢武弘、女はその妻の真砂。
それに、盗賊の多襄丸が登場し、平穏な旅をしていたこの夫婦に死が訪れます。
このいきさつを描いたのが藪の中。
1950年に黒沢明監督により「羅生門」というタイトルで映画化され、
大変好評を博し、ハリウッドでもリメイク版が作られたり、
日本でもいくつかこれを模した作品が作られました。
この物語に登場するそれぞれが、全部異なることを言うのです。
これは群盲像をなでるとは異なります。
群盲像をなでるは、全体を把握できないある種の無知さを表現したものですが、
この藪の中は、一つの事実についてのことですから、
個性的なフィルターによって、物事の真実はゆがめられる、
という事なんです。

 

さて、相変わらず、モンゴル騒動が続いています。
毎朝、テレビのワイドを見ていると、またか、と感じるほど、
この問題を取り上げています。
しかし、面白いもので、
この問題が勃発した時からの時系列的な流れを振り返ると、
要は、誰がわるもんで誰がいいもんなのか、という事が少しづつ入れ替わってくるんですね。
しかも、藪の中ではありませんが、随所に解釈の微妙な違いが生まれていて、
その選択の上限をたどれば、日馬富士はたいして悪くないんじゃない、とか、
いや、やっぱり殴ったという事は、傷害事件として成立するとか、
横綱引退にまでなったのは、周囲の対応が悪いからだとか、
どこか黒幕がいて、話をこじらせたとか、
そもそもが、貴乃花親方が黙して語らずという事が、真相解明の障害になっている、とか、
まあ、余りに多くの言葉が出すぎて、事実が見えなくなっています。


私はこの問題を藪の中に閉じ込めているのは、
率直にマスコミだと思うんです。
例えばです。
日馬富士の娘が学校でいじめられて泣いて帰ってきて、それが引退の引き金になった、
という報道ですが、一方でそんなことなかった、という報道もあります。

どっちかが嘘でどっちかが真実でしょ。
いったん、テレビの電波に乗れば、それが事実でなければ誤報ですし、
週刊誌や新聞の活字で刷られれば、これまた事実として多くの人に伝えられてしまいます。
まして、ややこしいことに、SNSを含めたネットの世界では、
一瞬にして、事実か事実でないかはともかく、
ある権威が発信すれば、それが拡散されてしまいます。


不要な情報が渦巻く現代社会です。
情報を発信する、特にメディア関係者の誠意と熱意ある取材によって、
情報を確定すべきで、小耳にはさんだぐらいの情報を、
鬼の首を取ったような書き方をするのは慎むべきでしょう。
一番は、その情報で人を傷つけることはないのか、という事です。
メディアに関わる事の基本はゆるぎない正義感を持つことなんです。

 

最近の情報で、日馬富士が貴の岩を平手で殴ったら、睨み返した、という話がありました。
これはいかにも、貴の岩が、根性ワルな性格だ、と思うでしょ。
でも、睨み返すという表情は、実に微妙なもので、
びっくりして振り返った時に、起きた出来事が理解できていなければ、
一体何が起きたんだ、と言う顔になると思いませんか。
それを睨み返した、と解釈したのは、そういうフィルターでものを見たからで、
客観的に考えたら、瞬間的にすまなそうな顔をしろ、と言うのも妙な話でしょ。
いやまさにこれはやぶの中です。

 

ま、いずれにしても、事実は、様々な現象を丹念に積み上げてゆけば、
明らかになるでしょうが、
このことで生じた人と人の間の感情は、そうは簡単に修復できないでしょうね。
これは大相撲界にとって、とてつもない大きな傷になるはずです。

 

| 水嶋かずあき | あれこれ | 13:19 | comments(1) | trackbacks(0) | - | - |
ただ基本的な構図は問題発生時から変わっていないようだが。
| やぶ枯らし | 2017/12/08 2:02 AM |









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