水嶋かずあきの甘辛問答

神奈川県平塚から、水嶋かずあきが語ります。
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新品種保護

新しい商品の開発を目指し、正に、あてどないような時間をかけ、
湯水のごとく費用をつぎ込んで、やっとゴールにたどり着く。
まあ、いい例が薬の世界です。
様々な試行錯誤をするプロセスをコスト計算し、
それによる商品価格を算出する。
まあ、実態の生産のためのコストにこれを乗せるわけですから、
薬価と言うのは、思いのほか高くなるわけです。


この間、白血病の新薬が開発された、というニュースがありました。
この新薬「キムリア」の価格が3349万円だそうです。
つまり貧乏人は、病気になるな、と言うに近い価格。
ま、保険適用を目指すという事ですから、患者の負担は軽減されるのでしょうが、
その差額は国が負担するわけです。
一つヒット商品を作ると、会社も安泰ですよね。
そこで、ジェネリック、と言う薬が登場します。
今は、当初いぶかしく思われていたジェネリックですが、
ま、できればそれでもいいんじゃない、という風潮が広がっているようです。
患者も国も結構な話でしょ。


私のお薬手帳には、ジェネリックでお願いします、と言うシールを貼っています。

 

このように、開発費用と言うのは、時に膨大なものがかかるのですが、
これは、成果に確信が持てなくても、いくつかの実験的プロセスを丁寧に踏んでゆけば、
ゴールに近付ける。
でも、よほどのラッキーがない限り、そこそこ時間と人件費がかかってしまうんですね。

 

この顕著な例が、農作物の新種改良です。
私は、10年ほど前まで、吉沢にある神奈川県農業技術センターと、
ラジオ番組を通じて、情報をいただいてきました。
月に一度なんですが、センター側で、担当者を割振りしてくれて、
現在進行中の品種改良について、その様子を話してもらうんです。
まあ、なかなか興味深い内容が多く、併せて、そのご苦労ぶりを肌で感じ取ったんです。
そのうちのいくつか、自信作ともいうべき新品種について、
いかに売り出すか、と言うことのお手伝いを、食べ物屋として、したことがあったのです。
一つは新しい茄子の開発で、えぐみを少なくし、生でも食べられる品種、ということで、
サラダムラサキ、と言う品種名の茄子が開発されました。


農産品の場合、開発した新品種に命名しますが、
種そのものの名称を使うことができないのです。
例えば、茄子ですと、サラダ茄子、という名前は付けられません。
いや、これは法的と言うか、そういう規則になっているんですね。
うまいコメを開発しても、うまいまい、なんて名前は付けられないのです。
ですからこの茄子も、ぎりぎりムラサキという言葉で茄子らしさを表したんですね。


ところが、このサラダという言葉が逆に引っかかったようで、
サラダでもおいしい、という意味合いがあったと思うのですが、
消費者は、この茄子を漬物にしようとか、麻婆茄子に使おうとか考えない。
生でも食べられるが、生で食べる、と解釈してしまうんですね。
実際食べてみて色々な料理を提案したんですが、正直、生じゃないほうがおいしかったんですね。
結局ネーミングで失敗したのか、思いのほか、生産が伸びませんでした。

 

ま、いずれにしても、一つの農産物を開発するのに、
10年やそこいらはかかってしまうんです。
おそらく100のネタから生き残るのは一つ二つでしょ。
ですから、新品種と言うのは、総意工夫の塊なわけです。
別の言葉で、涙と汗の結晶、ということです。

 

したがって、ある種の特許的意味を持つわけで、国内ではそれが、整然と取り扱われて来たものの、
海外では必ずしも、農作物の著作権的概念が、日本とは、ずれているんですね。
特に、このような概念が薄い国では、平然とこの著作権の侵害をしているようです。

で、ここにきて、やっと、農林水産省が、国内で開発された農産物の新品種保護の強化に向けて、
種苗法を改正する検討に入った、ということのようです。
ま、いつでも問題は大きくなってからの対応と言うわけですから、
後手対応のそしりは免れませんが、まずは、問題に取り組むということは結構なことです。

 

日本では、農産物を品種登録すると
種苗法で登録者(育成者)の販売権が25年(果物は30年)保護されるんです。
ところが、海外流出を食い止める規制が不備だったんですね。

日本で開発されたブドウの一種で、皮ごと食べられるシャインマスカットと言う品種があるんですが、
この苗木が持ち出され、中国や韓国で栽培されるようになり、
挙句の果てに一部は東南アジアに輸出されているのだそうです。
人のふんどしで相撲を取るのもいかがか、と言うのに、
そのふんどしで稼いでいるわけですから、これはルール違反でしょ。

 

で、中国、韓国では日本で売り出されてから4年(果物は6年)以内に登録しなければ販売権が認められない、
と言う法律があって、日本ではこれらの手続きをしてこなかったんですね。
したがって、登録期間が過ぎての無断栽培や販売の差し止めが事実上できないんです。
ま、のんきというか、ボーとしているというか、農政のずさんさの一環です。

 

チコちゃんに怒られそうですね。

| 水嶋かずあき | - | 11:02 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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