水嶋かずあきの甘辛問答

神奈川県平塚から、水嶋かずあきが語ります。
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友釣りの記

もう、故人となりましたが、敬愛する先輩の一人に、
戸本さんと言う方が居ました。
紅谷町のパールロードと線路の間辺りで、
田園と言う喫茶店を経営されていました。
昔、あの界隈をウロウロした方はご記憶があると思います。


私は、20代から30代にかけて、田園には入り浸っていましたから、
その意味でもかなり近い距離の先輩だったんですね。

で、ある時、戸本さんが、君は釣りをやるか?と聞いてきたのです。
私は、釣りは殆どやったことなく、せめてもの経験と言えば、
山間の清流の横に作られた釣堀で、ニジマスを釣ったのが精いっぱい。
当然竿とか釣り道具の類は持っていませんでした。


時期はちょうど今頃。
話題ももっぱら鮎釣りの話。
釣り好きの人には、この時期は待ってましたと

解禁になった鮎にのめり込むのが定石のようになっていて、
私の周囲も、鮎釣りに血道を上げている人が多かったです。

 

私の父は投網の名人でしたので、瀬打ちと言って、

目の細かい網目で、半径も、いいとこふたひろ、
約3メートルちょっとぐらいの大きさ、
これを川の瀬で打って、手で、鮎を押さえるというアユ漁をしていました。
で、子供のころからこの網打ちについて行って、自然と投網も覚え、
シーズンになると、鮎うちに出かけたものでした。
ですから投網で鮎、というのは経験があるのですが、

釣りで鮎と言うのは未経験だったのです。


で、戸本さんから鮎を釣りにいかないか、と誘われたのです。
鮎はなんて言ったって、友釣りだよ、と。

 

わたしは、実はこの鮎釣りに一緒に行くことになったのですが、
木曽川の上流の釣り場に着くまで、友釣りと言うのは、
友達同士で釣りに行くこと、と思い込んでいました。
この誤解が解けたのは、おとり鮎を川辺の河川組合の事務所で、買ってからです。
戸本さんは、いけすで泳いでいる鮎の品定めをしながら、
店の人に、友の勢いがないとやっぱり釣果は期待できないもんね、とか言ってるんです。
私は、私に元気がないと釣れない、という意味と解釈したんですね。
ま、確かに、一緒に行ったものが、屁たれだったら、釣果もパッとしないだろうと。
そこで、恐る恐る、いまさらですが、私が伴でよかったんですか、と聞きました。
戸本さんは怪訝な顔をして、おれが誘ったんだから、なんの文句もないよ、と。
でも今、友の勢いがないと、と言ってましたよね、と念を押すと、
突然と笑いだし、友ってさ、おとりのことだよ、と。
鮎で鮎を釣るんで友釣りっていうんだ。


私はとんだ勘違いをそこで知ったのです。

この友釣りは、ご存知と思いますが、縄張り意識の強い鮎の習性を利用して、
生きた鮎をそこにいるであろう鮎の縄張りに泳がせるんですね。
と、前からそのあたりを縄張りにしている鮎が、邪魔者が来た、とばかり、追いだそうとする。
時に体当たりをして追い出すんですね。
この時、おとり鮎のすぐそばに仕掛けた釣り針に引っかかってしまう。
とまあ、鮎の習性を逆手に取った釣りの方法の一つなんです。
これを世間では友釣りと言うんです。

 

まあ初心者でしたからその日の釣果は1匹。
もっともそれ以来鮎釣りはやったことがないので、

わが生涯で、唯一釣り上げた鮎は、一匹と言うことです。


夕方は、夕方で別な鮎漁をしました。
日が暮れてから、カスミ網のような網を川の淵に仕掛け、上流から焼いたタイヤを流すんです。
たき火に使わなくなったタイヤをくべて、ゴムを燃やす。
で、これを上流から流すと、火に驚いて鮎が川を下るんです。
そこで、一網打尽とはこのこと、

仕掛けた網に首を差し込んでバタバタしている鮎を網から外すんですね。
まあ、そういう漁法があるわけです。


で、その日は戸本さんの知人のうちに泊めてもらうことになっていて、

夕食もそこでご馳走になったのです。

獲り立ての、格別味のいい鮎が、まさに山盛り。
竹串で刺したアユを炉辺で塩焼きにし、
それだけで腹いっぱいになるほど、鮎を食べまくりました。


私はもともと鮎が大好きで、いまでも魚屋に並ぶと、つい買ってしまいます。

たまたま、昨日、いつものスーパーの鮮魚コーナーに若鮎と言っても10センチ弱のサイズのものが
パックになって売っていたんです。
10匹ぐらいは入っていたでしょうか。
これを二パック買って、今朝、てんぷらにして食べたのです。

ところが、かみさんもおじいちゃんもほとんど手を付けない。
いやあ、残してはもったいないと、バクバクと鮎の連続食い。
ふと、はるか昔の木曾の上流で食べた鮎の味を思い出しました。
今、正に旬の味ですもんね。

| 水嶋かずあき | グルメ | 18:27 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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