今はなんてことなく受け入れていますが、郵便番号が導入された時、
手書きのさまざまな形の数字、うまい字も下手な字も含め、読み取る機械の能力に、
一部の人は疑問を持ったのです。
機械にゃ無理だろうと。
しかし、現実には、その仕事をこなすプログラムが開発されていて、
なんの問題もなく郵便番号の制度は採り入れられてきました。
まあ、この時代で言えば、数字の認識なんて、お茶の子さいさいでしょ。
コンピューターのソフトの開発は、桁違いの速度で進んでいて、
遂には、顔認証が普及するようになりました。
噂では、中国では、どんな人ごみの中でも顔認証システムによって、
怪しい人はピックアップできるのだとか。
ある意味怖い話ですね。
さる大手の複数の書店で、防犯カメラで撮影した万引きしたとみられる人物の画像を
共有する事にしたらしいのです。
これは、画像を各店舗の顔認証システムに登録し、該当者が来店すると警備員らが警戒を強め、
万引き被害を未然に防ごうと言うものです。
もちろん、今時の個人情報に抵触しますので、その管理は相当厳しくされるようですが、
このようなことまでしなくてはいけない背景は、書店の厳しい経営環境にあるようです。
何しろ営業利益が売り上げの1%程度だそうで、
カツカツの状況で経営されているんですね。
そこで、時に万引きが1%近くなると、利益が飛んでしまうとか。
いわば万引き防止は死活問題なんですね。
そこで防御策を取るということです。
いずれにしても、法的な対応が必要なようですが、
店頭で、そのようなことを行うことを告知するそうです。
まあ、それはそれで意味があるでしょうね。
で、こうしたことが可能になったのは、顔認証システムの技術が進化したからです。
哺乳類など一部の動物にはこの顔認証システムが発達した種がいます。
でないと、群れで生活するものは、問題が発生しがちになるんですね。
当然ですが、人間にもこのシステムは高度に発達してきたのですが、
私のように、顔認証システムに欠陥がある人間にとっては、
どうして、みんな区別ができるのだろうか、と不思議に思う事さえあります。
たまたま、大阪で、人と会うことになり、ホテルのロビーで1時間ほど話をしたのです。
その後、席を変えようということで、私はまだチェックインしていなかったので、
チェックインを済ませ、部屋の荷物を置いてロビーに戻ると、
さっきの人がどんな人だったか、思い出せないんですね。
顔の雰囲気とか、メガネをかけているかどうかとか、
どんな服装だったのか、とか、ほとんど記憶にない。
たった15分ほどの前まで話し込んでいた人です。
普通なら、ロビーを見まわして、相手に近寄り、どうもお待たせしました、とかいうはずでしょ。
それが、何十人かいるロビーで人待ち顔の人のだれかが分からないんですね。
きょろきょろしていると、ややあって、向こうから近付いてきてくれました。
この経験で、はっきりと顔認証システムが、私には備えられていない、と分かったんです。
困るのが、テレビや映画などを見ていて、登場人物の区分けができなくなる時があるんです。
例えば、あるアクションもののストーリーで、どろどろになって一組の男女が危機を脱する。
翌日、浜辺のコテージのような所で、優雅にコーヒーでも飲んでいる。
当然ですが、どろどろの状態から服装も髪型も変えて、さわやかな雰囲気になっているわけでしょ。
でも、さっきまでの女性と一致しないんですね。
したがって、新たな登場人物か、なんて考えてしまうことになります。
以前戦争ものの映画を見に行ったんです。
確かベトナム戦争の時のある部隊の物語です。
で、その主演の兵士たちの大半が、黒人だったんです。
さらに、全員が軍服を着ていて、服装による区別ができない。
最初の10分ぐらいで、見る映画の選択を間違えた、と思いました。
しかし、コンピュータの進化はすごい。
顔がわかるんですからね。
これを何とか私の頭の中に組み込めないでしょうか。
いや、今更もういいか。
そういう人生だった、と。
道端で私とすれ違って、挨拶が返されないとしたら、
この顏認証システムが、さらに不調になっている、と思ってください。