水嶋かずあきの甘辛問答

神奈川県平塚から、水嶋かずあきが語ります。
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読み聞かせの体験談 その2

 

昨日の続きです。

 

そして、いよいよ、10月1日、第一日目を迎えました。
出かける私をかみさんが励ましてくれました。
夕方5時半にマンションを自転車で出発。

前照灯が必要なくらい日も暮れて暗くなっています。

私は、パイロット通りを直進し、総合公園の角で、左折、

もう学校に向かいました。

出かける前までは、いい年こいて、ちょっとばかり不安があったのですが、

行く道、不思議と不安より期待が膨らんできたのです。
なんとなくですが、今までにない素晴らしい時間が過ごせそうだ、と。
なにより、本を読み聞かせるという事の意義もさることながら、

K君との間にどのような心の交流ができるか、と言うことも期待の半分でした。

そして、1時間の間、本を読むということのエネルギーがどれほど必要なのか。

また、初見で、つっかえずに、表情豊かに内容をどのように読むのか。

多少の不安はあったものの、

文章を読む技術、内容の表現の仕方などは、

この何十年かナパサやSCNの活動で培ってきたじゃないか、
と思ったんですね。

まあ、なんとかなるだろうと。

そうこうすうちにもう学校に到着。

前の見学の時に教えられたところに自転車を駐輪。

校舎の中の一室に、準備のためにボランティアが寄る部屋があって、

すでに原さんは到着していました。

続々とボランティアが集合。

そこで待っていると、その日の子等が6人、先生に連れられてやってきたのです。

 

本年度の後期の第一日目と言うことで、
改めて、子等の自己紹介と、我々ボランティアの自己紹介が行われました。
この間も、K君は飛び跳ねていたんです。
再び、不安が頭をもたげてきました。
ここまで来て、バタバタできない、まあ、何とかなるだろう、と。
この日の読む本は、電車おたくとでも言えるような作者が書いた物語。

「電車で行こう、山手線で」と言うタイトル。
前回まで60ページほど読んであったので、今日はその続き。

 

K君は広い10畳ほどの部屋の壁際に畳が敷いてあって、
そこに座っています。
私は、K君が使っているであろうイスを持ってきてその真ん前に座りました。

マンションの自販機で買ってきた「梅よろし」と言う清涼飲料水を2本買ってきたので、

一本を彼にプレゼント。

どうもやたら飲んではいけないようで、炭酸は入っていないか、と聞き返しました。

入ってないよ、と言うと、でも、念のため、後で先生に確認する、と言うことだったんですね。

なかなかルールを守るいい子じゃん、と思いました。

改めて自己紹介をして、K君の年と私の年の比較をしたんですね。
K君15歳、私75歳。
還暦ほどの年の差、というか、おじいちゃんと孫です。
ま、世間話はそこそこに、本を読んでもらうように、と、先生からくぎを刺されていたので、
では続きを読むよ、と、開始の合図。
もしかして話の途中で、奇声を上げたり、ぴょんちょん跳ねたりしたら、
まあそれなりに鎮めればいいか、と思っていたんです。

彼は膝を抱え込んでじっと耳を澄ませているようでした。

思いのほか静かに聞いてくれたのです。


私が物語の主人公の名前をちょっと間違えて読んでしまったのです。
私はそのことに気づきませんでした。
K君が、ちらっと何か言ったんです。
私は彼の口に耳を近付け、何?と聞きました。
小さな声で、名前が違う、と言いました。
私は謝り、訂正し、その先を読みました。

 

この物語は、もちろん、全盲の子が聞かされるなんて想定していないので、

やたらと色の表現が出てくるのです。

河口湖で初日を見るシーンがあるのですが、

日の出前の空が、ピンクから紫色に染まる様子。

陽が出て、湖面がオレンジ色に光り輝くところなど、文章として出てくるんですから、

そのように読みます。

私は色や形が表現されるたびに、ちゃんと情景は心の中で結ばれているのだろうか

と心配になってしまうのです。

別な章で、山手線の新型車両の記述が出てきます。

E235系と言うのだそうです。

この車両の形態や、外観の色、車内のレイアウトや

椅子や床の色など、普通に表現されるのです。

勝手ながら、そういう場面はちょっと心苦しく感じてしまいます。

見えない世界はどんなものかを想像するのですが、

私たちは、見える世界しか経験していないのですから、無理な話。

これは彼らにとって大変な努力がいるだろうなと思いました。

 

なんだかんだと読み続け、50ページほど読んだでしょうか。
さすがに、のどが乾いたし、物語の切りのいい所でもあったので、
ちょっと休憩しよう、と、持ってきたボトル飲料を飲んで、
ついでに時間を観たら、なんと6時59分。
あれれ、もうこんな時間だ、
残念だけど、今日はこれで終わりにしよう、と。
正直思いのほか時間が過ぎるのが早く感じました。
何より、K君はこの1時間、実に静かに話を聞いてくれました。
しかも、ちゃんと内容を把握しているのです。
なかなか頭のいい子です。

私の不安がっていたことは杞憂に終わったのです。

 

私は、余計な想像をしたこと失礼なことだったと反省しました。

あと2週間後が、再会の時です。
私がそういうと、彼は次の火曜日は10日ではないのか、と言ったんです。
私は決まりとして、2週間後が予定日なんだ、と謝りました。
彼と握手をして分かれました。
実にすばらしい時間を過ごすことができたのです。

なんと、なんとですよ、再来週、K君に合うのが楽しみに感じています。

 

| 水嶋かずあき | あれこれ | 13:15 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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