水嶋かずあきの甘辛問答

神奈川県平塚から、水嶋かずあきが語ります。
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岸辺のアルバム

八千草薫さんがお亡くなりになりました。

まあ関係者でもないので、健康状態まで知らなくても当然なのでしょうが、
つい先日まで、テレビドラマ「やすらぎの刻」に出演していたのですから、

正に突然の訃報と言うことになりました。

テレビで見る限り、
そんな大病を抱えているとは思えなかったですね。
それに改めて知ったのですが、享年88歳、と言うことで、

まあ、ありきたりの言葉かもしれませんが、そんな年には見えなかったですね。

 

若いころの輝くような容貌も、年と共に衰えるのはこれ仕方ないことですが、
それにしても往時の美貌をほうふつとさせる雰囲気は、80歳を過ぎてなお保っていて、
私は何歳になっても彼女のかもしだす独特のものは、なかなか他に見ることのできない
稀有のものを持っている、と思っていました。


それは、一言で言えば「品」と言えるでしょうか。
美しいとか、かわいいとか、個性的であるとか、癒されるとか、まあ女性の美貌の表す言葉は様々ですが、
品と言う概念が当てはなる人はなかなかいないものです。

ある意味、その品が、演技の中で女の危うさとぎりぎりに表現された時、
まあきっと、世の男は虜になってしまうんでしょうね。

 

私と同年代の男性の何人か八千草薫評を聞いたのですが、
彼女の女の裏表を見事に表現していたのが、「岸辺のアルバム」だったろう、ということになりました。

 

たまたま、台風19号で千曲川沿いに建っていた民家が、激流に地べたを削り取られ、
やがてゆっくりと家が傾く。
少しづつ少しづつ泥流は岸辺を侵食し、家が川の濁流に取り込まれる。
最後、家は川の流れとともにゆっくりと、ゆっくりと流されてゆく。
と言ったシーンをテレビ画面で観ました。

その家に住んでいた家族の人たちは、きっと胸の張り裂けるような思いで、

そのシーンを見ていたんでしょうね。

大事なもの、家族の証し、

それこそ人生の歩みの大半の足跡を抱え込んだまま、家は流されてゆくのです。

なんか、他人事ではないでしょ。

 

この時シーンをテレビで見ている時に、かみさんも同じ感想を持ったのですが、
かつて、多摩川の河川のきわきわに建てられていた家が、
同じように濁流にゆっくりと飲み込まれていったシーンがあって、
その時と同じようだった、ということになりました。

 

で、このシーンはその後テレビドラマの岸辺のアルバムに出てくるのですが、
いみじくも、ごくごく最近のこの映像で、岸辺のアルバムのことを思い出しました。

もう、昔むかしのことでしたが、とても心に深く残ったドラマでした。

 

八千草さん演ずる人妻が、竹脇無我演ずる中年の男と恋に落ちてゆくんですね。
あの八千草さんの品のあるところが、

逆にそういうストーリーにそぐわないと同時に、

濁流に飲み込まれてゆくような危機感のような、強い不安を感じるんですね。
岸辺のアルバムは、いわば、家族をテーマにした物語なんですが、

家族一人一人が問題を抱えていて、
一見、しあわせそうな家族も、一皮むけば、それぞれが傷だらけの人生を送っている、と言う事なんですね。
息子に国広富行、娘に中田喜子が役を得て、それぞれ好演していました。

私にとって八千草かおるさんのドラマや映画は、
可憐で品のいい女性と言う役柄の印象が強かったのですが、
不倫をする人妻という役柄が改めて、

演技者としての枠を大きく広げたのではないか、と感じたのです。

その意味で、彼女の女優歴として、

一つの頂点でもあった岸辺のアルバムを再現するような台風で、

家屋の流出と言うシーンが、ここのところであった、ということに、妙な因縁を感じているんです。

 

ファンの一人として、心からのご冥福をお祈りします。

| 水嶋かずあき | あれこれ | 19:49 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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