水嶋かずあきの甘辛問答

神奈川県平塚から、水嶋かずあきが語ります。
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情報と権威

昔々、家長制度というのがありました。
今の憲法になって、すべての人の人権と自由が保障されたので、
この制度は無くなりましたが、
一家を単位にとして、そこに家長を定め、
一家の中においては強大な権限が与えられていたのです。
極端な話、息子や娘の婚姻に対して、家長が反対すると成立しませんでした。
家長制度が亡くなってからも、この制度は、暫くの間、余韻のように日本の家庭には残っていました。

 

何しろ、家では、お父さんが一番なわけです。

まあ、今となっては考えられないでしょうが、
例えば夕食時の時など、お父さんが箸をつける前は、他の家族は食事ができなかったのです。
何より、お父さんの目の前には、一番多くのご馳走が出されていて、
明らかに他の家族とは差が付けられていました。
たぶん、一品や二品は多かったと思います。
今じゃ考えられませんね。
むしろ、子どもの方が、育ち盛りだから、とか言いながら、
お父さんよりボリュームのある盛り方だったりするでしょ。
ま、ことほど左様に、父親は家の中にあって、権威ある存在だったのです。

 

母親から、お父さんが呼んでいたわよ、とか言われて、
(我が家の話ではないです。)
父の書斎(今時そんな部屋もない)に行くと、机に向かって書き物をしていた父は、
振り向きもせず、そこに坐れ、と一言。
ありゃ、なんか説教か、と身構える。
なんて、シーンがあっても不思議じゃないくらい父の権威というものがあったんですね。

で、別段、家長制度なんてものが無くても、
昔のお父さんは偉かったでしょ。
どことなく、家族の中では、相応の威風を持っていました。
で、これにはわけがあるんです。
その最大の要因は情報ですね。
テレビもなく、ラジオもそれほど普及していない頃では、
父親がもたらす情報が最大のものだったんですね。
仕事上入ってきた情報、世間でのお付き合いから得た情報。
ともかく世の中に、我が家代表で接しているには父親ですから、この父親が一番情報を持っている。
家族はこの父親のもたらす情報を聞かされてきてわけです。
権威と言うのは、情報量に応じたものだったのです。

 

実は社会は、この情報量と権威というものが比例しているわけです。
よくある話ですが、社長付きの秘書がいて、
当然ですが社長に入ってくる情報に接している。
下手な取締役よりもずっと情報量を持っていますから、
立場上は上下関係があったとしても、実態としての情報が多いので、その面では立場が逆転するんですね。
勘違いをした秘書はそれが権威だと思ってしまい、ちょっと威張ったりする。
時に、周囲から批判を受けたりするもんです。
虎の衣を借りた狐、ですね。

で、情報というものは、かつて、足で稼いで、目で見、耳で聞き取ったものでした。
しかし、現在のようにここまで情報のネットワークが拡大したということは、
情報入手チャンネルが変化し、多元化してきたわけです。
かつてのお父さんの立場が弱くなってゆきます。

お父さんは朝会社に出勤する。
退社時間まで、限られた世界で動き回る。
基本的に世間を飛び交っている情報とは隔離されている社会です。
で、夜になって我が家に戻ってくる。
夕飯かなんか食べながら、テレビやスマホを通じて続々と世間の情報を手に入れているかみさんに、
ところで、炎鵬は今日勝ったか、とか、ゴーンはどんな反論をしたんだ?とか聞く。
かみさんは一日かけて収集した情報をそれなりに伝える。

もうこの時点で家長たる権威はないわけです。
何しろ情報量が権威の裏付けであるとしたら、
まちがいなく、外でうろうろしている亭主より、
家で情報をチェックしているかみさんの方が、権威の裏付けを持っているわけです。

 

ともかく、スマホの出現によって、
情報を扱うという実に重要な生活の側面を、多くの人は平準的に手にしているわけです。
収集だけでなく、SNSを活用すれば発信もなんてことなくできる。
しかもその発信先は全世界です。

かつて家長と同じように、情報の取り扱いはジャーナリストの特権でもありました。
しかし、一人一人の資質はともかく、情報発信の権利はすべての人に託されることになったわけです。
つまり、おのおの勝手にということです。
そもそも、ジャーナリストとしては、単に文章的な訓練だけではなく、
物事をとらえる視点や、問題を分析する力など、資質を備えているはずなんですね。
何よりも、社会正義を確たるものとして持っていると言うことが重要なんですが、
どうもこれらの資質が不十分なまま、情報を発している自称ジャーナリストのなんと多いことか。
情報の普遍化とともに、ジャーナリストの質的な低下が混然となってしまっていないか、と。

私は、社会正義を確立するうえで、司法の諸機関に次ぐ位置にジャーナリストが存在している、
と考えています。
情報発信者の平準化の波にのまれることなく、

従来のような姿勢をつらぬいてほしい、と願っています。

| 水嶋かずあき | あれこれ | 10:34 | comments(0) | - | - | - |









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