水嶋かずあきの甘辛問答

神奈川県平塚から、水嶋かずあきが語ります。
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21日は土用丑の日

明後日、21日は土用丑の日です。
昔、今のマンションになる前にここでうなぎ屋をやっていたのですが、
丑の日が近づくと、そのころのことを思い出します。
もう前日ぐらいから、丑の日景気になっていって、

店頭には、明日は土用丑の日、というポスターを貼り出します。
当然、当日は、本日土用丑の日、に変わるのです。
もっとも、ポスターの上のところが本日になっていて、
その上に、前日用として、明日はという部分を重ねるわけです。
当時、未練たらしく、この「明日は」が「本日は」に変わるんだから、
「昨日は」と言うのに変えて、三日間売り出したらどうだ、と考えたのですが、
実態を言えば、前日が普段より10倍ぐらい売れたとして、終わった翌日の売り上げはいいとこ2〜3割り増し。
まあ、それなりの影響はあるのですが、やはり、抜け殻のような日になってしまうんですね。
ちなみに、当日は普段の50倍から80倍ぐらい。
極端な話、丑の日一日で、一か月分に近いくらいの売り上げになるるんですね。
いやいや、思い出してもいい時代でしたね。
ともかく生産能力の限界まで品物がはけてしまうんですから、
日本の食文化、っていうものの執念のようなものを感じたもの
なにも、その前後に食べったっていいじゃないか、と思うんですけどね。
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そもそもが、ウナギを食べる習慣というのは、

この時期になるとあちらこちらで紹介されるようになりますが、
その大本は、昔々、それこそ万葉の時代ぐらいから、
ウナギを薬食いしていたようです。
今の、開いたかば焼きという形態ではなかったようですが、
ともかく、栄養価が高いので、夏になって体力が衰弱してくる、つまり夏痩せなどになった時に、
栄養補給減としてウナギを食べたんですね。
もちろん、旨いはうまいのでしょうが、体にいい、と言ういことが前提だったようです。
これを裏付ける歌が残されていて、
「われ石麻呂に物申す、夏痩せに良しと言うものぞ、むなぎ取り召せ」と大伴家持が歌っています。
親友に対する心温まるメッセージですね。
むなぎと言うのは当時の表現。
ここを勝手に類推して、胸が黄色いから胸黄と言ったとか、丸太棒のような姿なので、
棟木といった、とか、落語の世界では、鵜がウナギを飲み込むときに、あまりに長いので
四苦八苦、目を白黒しながらやっとの思いで飲み込むというところを指して、
鵜が難儀をしている、ということで、鵜難儀が崩れてウナギと言うとか、
まあ正に諸説ありですね。
ちなみに、ウナギの現在の食べ方の主流は、まずは割いてたれで焼いて、かば焼きを作りますが、
その昔、割くという技術がなかったころは、筒切りにして串にさして焼いていました。
ちょうど細い串に刺さった形が、河原などに当時は普通に自生していた蒲の穂によく似ていたんですね。
そこで、蒲の一字を取って、ガマ焼きが、かば焼きになったのです。
読み方はともかく、蒲焼と言う字からもそれは明白なことです。

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しばしば関西流の蒲焼と、関東流の蒲焼が比較されますが、
関東は背開き、竹串で打って調理します。
関西は、腹開きで、金串を打って焼きます。
関西と関東の大きな違いは、その根底に蒸す、という調理工程があるかどうかです。
これが決定的な調理法の違いを生み出しました。
関西流が江戸に伝わり、その後改良されたので、私は、関東流の蒲焼のほうが、
進化した調理法だ、と思っています。
なぜ、関東では蒸すようになったのか、ですが、
要因は三つあります。
一つは、油を抜いて、しつこさを抑えるためです。
二つ目は、身を柔らかく仕上げるためです。
三つ目は、ウナギの生血にはイクシオヘモトキシンと言う毒性の強いものが含まれていて、

この解毒をするのに、熱を加えるのですが、
蒸すという工程を入れることで、完全解毒できるということです。
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で、その蒸すという工程のために、まずは金串が使えなくなりました。
簡単な話、蒸し器から取り出すとき、金串では熱くてうまく持てないのです。
そこで、熱伝導の低い竹串が使われるようになりました。
ところが、竹串だと、金串より身に差し込んだ時、抵抗が強く、作業がしにくいんですね。
竹の表面と金串の表面を比べれば、金串のほうがずっと刺しやすいだろう、と言うことは見当つくでしょ。
さて、ウナギの胴体の断面を見るとわかるのですが、背側の肉と腹側の肉では厚さが異なり、
薄いところから串を打ち込むのは難しいんですね。
そこで、身の厚い側から打ち込めるようにと、背開きになったのです。
時々したり顔で、江戸には侍が多くいて、腹を切るというのは縁起が悪いから、

なんてこじつけ負いう人がいますが、
よくよく考えてください、普通魚をさばくときはまず腹を切ります。
内臓抜くためですが、それだったら、侍は魚を食べれなくなってしまうでしょ。
まあ、言葉の遊びですよね。
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今年のシラス漁は好調のようで、一時キロ290万円ほどしていたことがありましたが、
その半値の140万円台を推移しているようです。
とはいえ、キロ140万円です。
シラスの重さは、一匹0.2gぐらい。
つまり1キロで5000匹です。
そうめんぐらいのサイズの魚の稚魚が、280円です。
直径1〜2ミリ体調5〜6センチの魚がです。
そう考えると、養殖過程で死んでしまうものもいるでしょうし、餌代、管理の手間など考えれば、
そう安く出荷できるわけもありません。
知り合いのウナギ屋に聞いたところ、ここしばらく高値続きで、もうもうけもあったものじゃない。
つま先立ちの状態が続いているので、
ここで一時値が下がったからと言って、安く売るのはきつい話だ。
何より、この後収穫量が保証されているわけじゃないし、と言ってました。
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まあ、お手軽に丑の日だからウナギを食うか、と言う人は、中国産で我慢するしかないですね。
大丈夫、血清の毒を抜いて調理するくらいですから、コロナぐらいは焼き殺していますので。

| 水嶋かずあき | グルメ | 10:59 | comments(0) | - | - | - |









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