水嶋かずあきの甘辛問答

神奈川県平塚から、水嶋かずあきが語ります。
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ポテサラ論争

ある食品売り場の惣菜コーナーで、その人は、きっとパックに入ったポテサラを買おうとしていたんでしょうね。

「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」とそばにいた高齢の男性が言ったとか。
で、この言い方に驚いた幼児連れの女性なのか、それを見ていたほかの女性なのか、
SNSでこのことを投稿したんですね。
私はそのオリジナルを読んではいません。
で、ここをきっかけに、この高齢男性の発言には批判が集まったそうです。
「ポテサラは簡単な料理か否か」という角度の違う論争まで起きているんだそうです。
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私はナパサで番組を担当していますが、テーマは経験上、料理に関する番組です。
もともとは、1994年の11月、FM湘南ナパサの午後のワイド枠を担当することになり、
その中の1時間枠をグルメグルメグルメというタイトルで放送を続けてきたのです。
開始から782回目で、一時中断、と言うか、私が降板することになりました。
市長選に立候補を表明したなかでのラジオの番組を持っていることはいかがなものか、

みたいなことを言う人もいて、ここは潔く降板したのです。
で、また、最近は、第1金曜日と第5金曜日に担当をしています。
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しばしばこの番組の中で、私の料理観のようなことを発言するのですが、
その上でこのポテサラ論争を評論するなら、自作に勝つものはない、と思うんですね。
時間がない、とか面倒とか、少しばかり作っても余ってしまうとか、
考えようによっては、安くつく、とか、
まあ、調理の出来合いを買う理由は山ほどあると思うのですが、
どんな理由を足し算しても、やはり料理は自作が原則だと思うのです、
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10年ほど前のことです。
私が、昨年の七夕のころに亡くなった鳥保の鳥海さんに連れられて、
水道橋の駅の近くの細い路地を進んだところにある狐柳庵と言うところで食事をしました。
ここの主の阿部狐柳さんが主宰している、小さな料亭です。
阿部さん自身は包丁を握らないのですが、阿部さんが献立を立てて、
自分が気に入った腕のいい職人が調理するというところでした。
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和食の本格的なお店、料亭とか旅館とかでは、調理場の親方は、その日の献立を立てると、
それを書きだし皆の見えるところに貼りだします。
実はこのことを献立、と言うんですね。
簡単な作業の指示などを書き込んだり、
盛り方をざっと絵にしたりと、人によって様々ですが、これを調理場に見えるところに貼るんですね。
一種の作業指示書です。
で、職方は、それを見て決められた仕事を分担して作る、と言うわけです。
親方の仕事は、ほぼそれで、終了。
ことほど左様に、献立を立てるということは相当な経験知識がないとできなかったんですね。
ですから、阿部さんが献立だけ立てて、あとは職方に任せるというのは、ありなんです。
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狐柳庵の座敷は一つだけ。
一日一組と言うことです。
で、その席に安倍さんは必ず顔を出して、その日の料理についていろいろと説明します。
こちらもプロですから、ちょっと突っ込んだ質問をするのですが、実に見事にこの質問を裁くんですね。
その知識の豊富なこと。
歩く料理百科事典みたいな人でした。
で、この時に阿部さんが言ったことで、私の心の奥に残っている言葉があります。
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「料理というのはね、皿の上に作り手のメッセージが載っていなくてはいけないんだよ。
もし、そこにメッセージが載っていないなら、それは餌だね。」と。
私は聞きながらそのメッセージとは、心遣いとかおもてなしの心とか、いろいろ解釈できると思うんですが、
きっと間違いなく、それは「愛」ではないか、と思ったんです。
食材への愛、調理過程の愛、食べる人への愛、です。
これが料理を作る過程で、メッセージを込めたものとなり、
皿の上に再現される。
食べる人は作り手のメッセージを受け止めて、食べる。

食材とともに、皿に盛られた料理人の心を食べる。
これが本来の料理の在り方です。
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ですから、面倒とか、そう思うこと自体料理を作る精神に欠けている、と言わざるを得ません。
だってそうでしょ。
どこぞの厨房で機械的に作られたポテトサラダに、何らかのメッセージが込められているんですか。
ただ、旨いまずいは分かるにしても、どこのだれが作ったものか分からない料理に、

愛は感じないと思うんですね。
ポテサラの出来合いを買ってどこが悪い、と思う人がいたら、
愛のない食べ物を食べる子供、ご主人のことを考えるべきだろうと。
阿部先生の言い方でいえば、餌を食べさせていることになるからです。
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私は月に3〜4回はポテサラを作ります。
これで和えるマヨネーズは自家製です。
玉子とオイル、酢に塩など、材料は単純ですし、さほど複雑な工程は必要ではありません。
間違いなく、K社とか、A社とかの出来合いのマヨネーズとは、一味も二味も違います。
そんな面倒なことしてるの、とか言われますが、

面倒を避けること自体、愛がないということでしょ。

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私はそのいちゃもんを付けたどこぞのおやじに一票投じます。

 

| 水嶋かずあき | グルメ | 11:42 | comments(0) | - | - | - |









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